人生脚本に気づき自分を変える3
「再決断」へのプロセス
【症例2】殉教者からの解放
Mさんは交流分析のグループで、他の患者さんのワークを観察する間に、次のことに気づくようになりました。
①私はこれまでの人生のいくつかの好機を人に譲り、自己犠牲的な役割を演じてきた。私には「殉教者」という脚本がぴたりと当てはまる。
②私の中心的な感情は恐怖である。自己主張に関連して常に強い恐怖が生じる。私は幼いときから「自分であってはいけない」という禁止令が支配下にあるようだ。
③この恐怖の感情の源を想起すると、必ず両親の激しいいさかいの場面が出てくる。
以下は、再決断のプロセスのピークの部分です。
(治療者)
目を閉じて夫婦喧嘩の場面に身をおいてください。今あなたは何歳ですか?
(Mさん)
10歳です。隣の部屋ですごい喧嘩が始まった。
(治療者)
それでは今日は、今の自分から別の新しい方法で気持ちを処理してみませんか?ご両親の喧嘩のそばで、ただ震えているのですか。?さんはどうしたいですか?
(Mさん)
「お父さん、やめて!お母さんやめて!私がどんなに怖くて、いやな思いをしているか分からないの。やめてよ!」と言いたい。
(治療者)
かまいませんよ。ここで、その通り腹の底からおっしゃってください。
(Mさん)
でも、そんなことを言ったら、父から蹴飛ばされるかも…。
(治療者)
10歳のあなたなら、そうでしょう。でも今の?さんなら、枕や毛布で身を守ることもできるんですよ。今のあなたで言ってみましょう。
(Mさん)
「お父さん、やめて!私は喧嘩はいやなの。怖いの。心配なの。子供は親の喧嘩がいやなのよ。こんな簡単な子供の気持ちが分からないの!やめてよ!」(涙を流しながら叫ぶ)
(治療者)
何が起こりましたか。お父さんは激怒しましたか?
(Mさん)
いいえ。二人は喧嘩をやめたわ。父も母も、びっくりした顔で私を見つめています。
(治療者)
すごいですね。?さんには、ご両親の喧嘩をやめさせるパワーがあるのですね。どんな気持ちですか?
(Mさん)
いい気持ちです。確かに私が体ごとぶつかっていって、今のように叫んだら、父と母は喧嘩をやめたと思います。
(治療者)
そうですか。確かに10歳の子供がそうするのは難しかったでしょうね。でも10歳の頃の恐怖や心配を、残りの人生で持ち続けることはやめてもいいのです。ちょっと今、想像のなかでご両親に聞いてみてください「私が怖がって心配し続ければ、いつかあなた方は喧嘩をやめるでしょう?」
(Mさん)
(その通りに言う)母はきょとんとした顔をしています。「お前がそんなに怖がっていたなんて知らなかったわ。第一お前はいつもいい子で、ニコニコしていたじゃないか」と言っています。
(治療者)
それを聞いてどんな感じ?
(Mさん)
ばかばかしい。こんなに長い間、私って一人相撲をとっていたのですね。もう一人でびくびくするのはやめます。
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